UVカットウエアブランドEPOCHAL(エポカル)
松成紀公子
※この記事は、Eduに掲載された文面を掲載しております。
ママの思いを込めたブランド
今から12年前、子どもがアトピーと診断され、紫外線対策もしてくださいと医者から言われたひとりのママがいました。
そこでUVカットができる製品を探し回りますが、納得できるものはありません。
UV加工製品はあっても、本当に紫外線を遮断できるUV生地製品がないからです。
ないなら作ればいい、その一念でママ友とベビーカーを押しながら、生地選びがら縫製工場探しとゼロから会社「EPOCHAL(エポカル、英語で画期的なという意)」をスタートさせたのが今回ご紹介する松成紀公子さんです。
「紫外線対策が必要な子どもとママのために、安心して使ってもらえる製品を世に送り続けます」
専業主婦から経営者になる決意をした松成さんの会社は自宅の一室から始まりました。
商品第1号は息子の紫外線対策のために作ったパーカ。
その後、息子の成長に合わせてサイズ展開や商品開発をしていき、今や400~500種類のUVカット製品を世に送り出す企業に成長しました。
UVカット素材の生地を買うため友人の協力を得て会社を設立
―― 息子さんのために会社を立ち上げた経緯を教えていただけますか?
当時1歳の息子が肌トラブルを起こし、皮膚科でアトピーと診断されました。息子がアトピーになるなんて思いもよりませんでした。お医者さんに「紫外線対策をしたほうがいい」と告げられ、皮膚科から自宅に帰ってくるまでの記憶がないほど、すごいショックを受けました。「これからどうやって息子を紫外線から守っていけばいいのだろう?」と悩み、紫外線対策用のウエアを探し回りました。ところが納得できるものが一着も見つかりません。ようやく見つけたのがUVカット素材の生地でした。「UVカット素材があるなら、私がその生地でアウターウエアを作れば息子を紫外線から守れる!」そう思いつき、さっそく生地を仕入れたいとお店に頼んだら、「会社でないとダメ」と断られてしまいました。前払いをします、と言っても個人には売ってくれません。そこで、「それならば、会社をつくろう」と決意したわけです。
―― 松成さんおひとりだけで会社をつくったのですか?
合資会社を設立するためには、2人の名前が必要でした。母親学級で知り合った友人に「会社をつくりたいの……」と相談したところ、「一緒にやるよ」と言ってくれました。そのときの友人が、今も一緒に働いている佐藤一枝さんです。私の母が縫製をやっていたことがあったので、母にも手伝ってもらいました。ただ、そのころは息子のためのウエアが中心で、同じように紫外線対策が必要なお子さんをおもちの人に個人レベルで販売するという感じで細々とやっていました。会社を始めるための資金は、結婚で銀行をやめたときの退職金の一部の20万円のみ。その資金では仕入れに精一杯だったので、会社のホームページを作るのも図書館で本を借りて勉強して自分たちで全部やりました。いつもの子どもをベビーカーに乗せて押しながら縫製工場を探し回ったりしていました。当時、「これからの時代、UVカット製品はもっと世の中に必要とされる」と私を励まし、背中を押してくれたのも佐藤さんでした。無我夢中で走っているうちに、私と佐藤さん妊婦学級で一緒だった元銀行員の友人、小川りえさんが経理担当になってくれ、少しずつ会社として形も整っていきました。
―― 紫外線対策が必要なお子さんは増えているのでしょうか?
会社を始めた頃は、アトピーの症状がひどくならないように紫外線をカットするなど予防的な場合が中心でしたが、今は予防に加えて、病気で日焼けをしてはいけないお子さん、白皮症や色素性乾皮症で日焼けできないお子さんも増えているように感じます。特に最近多いのが、やけど痕の保護のためにUVカットが必要なお子さんです。効果的なUVケアのサポートができるように、エポカル製品はすべて特殊繊維で作られたUVカット素材を使用しています。
お客さん一人ひとりの意見を次の商品開発の参考に
―― UVカット製品を開発するとき、どんなことに気をつけますか?
子どもはとても正直です。暑ければ脱ぎ、かぶりづらければ撮ってしまいます。子どもに好かれるものこそ、世代を問わず、人々が欲している製品と思います。私達は常に子どもに適しているかを第一に考えます。たとえば、暑い夏にも長袖を着用しなければいけない子どもにどうすれば快適に着てもらえるかを、製品の開発時に考えなければいけません。それができるのは母である私達だからこそかもしれませんので、まずは自分たちの子どもに着せたい製品などを考えます。UVカットウエアは全部、日本製にしています。また、お客様から寄せられる声は、本当に必要だからこその意見です。「こうしてほしかった」「少し短かった」などの厳しい意見も素直に受け止めて次の商品開発の参考にします。
息子がアトピーで大変だったことも経験していますから、「全国の子どもたちのために求められる製品を作らなければ」と一生懸命になります。必要とされていると感じることこそが、私の原動力なのかもしれません。自分が紫外線対策製品を欲しいと思っていたように、エポカル製品を必要とするママたち、子どもたちがいる。お客さんからの「買ってよかったです!助かりました」という一言だけで、とても幸せになります。これからも紫外線対策が必要な子どもとママのために、安心して使ってもらえるUVカット製品を世に送り続けます。
まつなり・きくこ
株式会社ピーカブー代表取締役。
結婚に伴い銀行を退職し、専業主婦となる。
1歳になった息子がアトピー性皮膚炎と診断されたのをきっかけに2002年4月、母親学級で知り合った育児仲間とともに紫外線予防対策のウエアを作る合資会社「ピーカブー」を立ち上げる。
同社を04年3月に有限会社、05年10月に株式会社にする。
仕事の傍ら、「子供のための紫外線対策協会」を設立し、情報発信や啓蒙活動にも力を注ぐ。
株式会社ピーカブー
埼玉県和光市で2002年に創業。紫外線対策用UVカットウエアをはじめ、育児用品や妊婦用品などの企画から開発、製作、販売まで手がける。自社ブランド「エポカル」では、紫外線対策用の子ども用UVカットウエアや帽子などを中心に、赤ちゃんから大人までの幅広い世代に向けた紫外線対策用製品を展開する。「アパレル製品等品質性能対策協議会法」定められた最高ランクのUVカット率90%以上よりも厳しい基準を自社独自で設定し、UVカット率92%以上の素材をエポカル製品では使用。UVカット製品は400~500種類に上り、年商1億円。UVカット素材の体操服やスクール用スイムウエアなどは、日本学校保健会推薦用品として認定されている。